ミスタージェイクは、クリスの家で飼われているシェパードで、齢は5歳。
趣味は、フットボール。一日中、ボールを蹴って喜んでいる。
クリスが昔、直径10cmほどの硬いピンクのボールを彼にプレゼントした。
今では色あせて、白だかピンクだかわからなくなっている。
おまけに、ジェイクが噛みすぎてボコボコになっている。
それでもジェイクは、そのボールが大好きだ。
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ミスタージェイクには、どうしても受け入れられないものが2つある。
1つ目は、彼の家(庭)にお構いなしに上がりこんでくる、猫だ。
侵入者を発見すると、おなかの底から出て行けと叫ぶ。
昼だろうが、夜だろうが、かまわず叫ぶ。
残念ながら、猫は図太い。
何度吠えられようと、何も聞こえていないかのようにその場に居座る。
そして、十分にリラックスして毛づくろいを始める。
どんなに敵を威嚇しても無駄だと気付いたジェイクは、
何も見なかったことにしてベットに戻り、
侵入者と同じように、自分も毛づくろいを始める。
そしていつの間にか、猫はいなくなっている。
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ミスタージェイクが長年受け入れられないものは、もう1つある。
ミスターサンディ 。5歳のチワワ。
毛が全身砂(サンド)のようなのでサンディと呼ばれている。
サンディは昼間はガレージにいて、
夜ベットにいく前の2時間ほど、ご主人の家にあがってくる。
庭の主ミスタージェイクは、彼が好きではない。
理由は簡単だ。
自分が普段入れない飼い主の家に、サンディが上がれること。
また夜の間、彼が飼い主の愛情を全て奪ってしまうからである。
夜、サンディが家にあがってくるのがわかると、
ジェイクは狂ったように吠える。
ジェイクはここにいるよ!
僕を忘れないで!
という悲痛な叫びと、
僕だけの大切なご主人だ!
今すぐ出て行け!
というサンディへの警告および嫉妬が、
”ヴァウヴァウ” という尋常ではない一吠に込められている。
当のサンディは、何も聞こえていないふりをして優越感を味わい、
飼い主の愛情を一身に受け、家中をハイスピードで駆け回る。
ジェイクも頭がいいので、どんなに窓の外から吠えても無駄だと知る。
そして、その切ない気持ちのやりどころなく、夜の闇の中で大好きなボールを蹴り続ける。
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ジェイクは今窓の外で、夕方の穏やかなひと時を、1人静かに感じている。